故郷ノ空
地元が嫌いだ。
今住んでいるんだけど、めちゃくちゃに嫌い。
人も嫌いだし街も嫌いだ。
良い思い出よりも悪い思い出の方が多いしそういうことほどよく覚えているものだ。嫌な話だけど。
ただ、僕の街は住むには良い条件が揃っているとは思う。
都会まで30分もあれば着くし、お金もそこまでかからない。
衣食住は整っているし、山も海も自転車で行ける距離にある。
なんなら掘り起こされていない埋蔵金伝説もある。
本当に住むにはもってこいの土地だ。
だが、そんな故郷の街は僕の深層心理に深く染み込み痕を残した記憶によって首を絞めんと僕に襲いかかるのだ。
真っ黒な掃除ロッカー、真っ白な黒板消し、早朝に轢き殺された狸の真っ赤な死骸。
そういった色のついたものが故郷の空を、そこに住む僕の瞳を、遠い過去に置いてきた春を濁った青に染めたのだ。